カーナサラダの彼

DSC_18741 DSC_2144ことごとくフラれる。
リゾートホテルのボーイは、耳の上を刈り上げていて、頭のてっぺんはくりくりの天然パーマ。日本人離れした濃い顔。私はバリにいるかのような錯覚をもつ。「前良川はすごいいいっす。」彼は友人と話すようにリラックスしている。さすが離島。ゆるいなぁ。受話器を耳に当てながら、ハッと思い出したようにこちらに顔を向け、長いまつ毛の奥の黒目をキラキラさせて聞く。「カーナサラダ食いました?」「カーナサラダ?」「海藻なんスけど、前良川で採れるやつは良質なんス!あれ旨いんだよなぁ。」いいなぁ、このかんじ。やれやれ。私は朝からとーんとフラれっぱなし。何に?カヌー会社のガイドに。私は焦ってホテルのデスクの彼に相談を持ちかけたところだった。が、結局私は自力で電話で問い合わせをしてなんとかガイドを手配した。私が問い合わせをしているあいだ、横で心配そうに立って様子を見守っていたボーイに「ガイドさん見つかった。」と告げると、ボーイの目はくるりんとして輝きを放ち、そして彼の右手の手のひらは私へ向けてひらっと宙に舞い上がった。ハイタッチ、そして、ぎゅっと握手。
DSC_2185

DSC_1839やっぱりゆるい。ここは日本じゃないよ。翌日私はマングローブのジャングルの中、カヌーをがっつり丸1日漕いで大満足で石垣島行きのフェリーを待っていた。なんか知っている声がすると思って、フェリー乗り場のロビーを見回すと彼がお客さんを迎えにきていた。「あっ」と思った瞬間、互いに目が合い、ボーイは他のお客さんに見つからないように、前の晩と同じくるりんとした瞳の満面の笑顔で手をあげ瞬間的な挨拶をしてくれた。(その一瞬の出来事は、見知らぬ外国へ初めて一人で行ったときに街中でマクドナルドやスターバックスを発見したときの感覚と似ている。)

DSC_1867

DSC_1829瞳がくるくるしたボーイや、お世話になったゲストハウスのおじちゃんおばちゃん、物腰穏やかなのにテキパキ働く姿に無駄がなくてカウンターに座りながらつい目で追ってしまう居酒屋のお兄さんや、太陽のような染め物のおばちゃん。もし私が誰かと旅行をしていたら、印象は薄くて顔も声も記憶の網に引っかからないまま、こんなにも離れがたい気持ちにならなかっただろう。そして私はこう思った。彼らは私のことを忘れちゃうのだろうな、と。彼らが私のことを忘れてしまうかもしれないという思いは、私の胸をきりきりさせる。インドで出会った人は何度も「僕のことを忘れないで。きっと君は日本に帰って普段の生活に戻ったらすっかり僕のことを忘れてしまうだろう。覚えていて。」と言った。私は笑って何事もなく話題を変えてしまったけれど、今ならあの人の気持ちが手に取るようによくわかる。

DSC_1568

DSC_2143


give me your comments! i would love hearing from you!